26歳、高卒、職歴なし

口だけは達者な26歳の、前を向いて生きていく記録

ライフルゲート - インド放浪#3

実は友人の一人が、既に僕と同じくコルカタインでインドを旅していたので前々から少しだけ情報をもらっていた。

「街が俺を騙してくる」

「街から出られない」

酒の席の笑い話と聞き流していたが、インドに降り立ってから妙にその言葉が頭をよぎった。

 

比較的換金レートがいいという店を調べ地下鉄に乗り込んだ。エスパラナーデから2、3駅で降り20分ほど歩いた。たしかに目的地の目の前にいるはずだったが見当たらない。近くの人に聞いてみると案内してくれた。

そのゲートにはライフルのようなデカい銃を持った軍服の男とヨレヨレの服の男が談笑していた。換金をしたいと伝えるとヨレヨレの服の男に中に招かれ、薄暗い建物に入るとさらに3人の男がおぉ客かぁといったような気怠さで僕を迎えた。

one minute! と一人が言い電話をかけ始めた。覚悟はしていたが当然すぐに済むはずもなかった。15分ほど何本か電話をかけたかと思うと、付いて来い、とその建物の内部にぞろぞろと進んでいった。何故こうもインド人の笑みは不適に映るのか、内心かなり恐怖しながら付いて行った。

 

古い映画で見るような格子戸のエレベーターに乗り込み四階ほど上に上がり(マジで怖い)、降りてさらに建物の奥へ進んだ。部屋がいくつもあったが閑散としておりほとんど人の気配はなかった(マフィアのアジトかなんかじゃないのかと思った)が、建物自体は比較的綺麗で余計に不気味だった(あーこれワンチャン死んだな殺されるわと思った)。

一番奥の部屋に入り、男たちはまたone minute!と言うとPCの前に座り作業を始めた。

 

結局小一時間ほど部屋の椅子に座らされ、男が紙切れにサインしろ、というのでもうどうにでもなれとサインすると、紙幣を数えてごっそりと持ってきた。確かに調べたレートと同程度で、これでいいな?に「お、OK.」と答えると彼はニッコリと笑った。

なんだか拍子抜けしてしまった。たかがこれだけの為に何故僕はここに1時間以上拘束されてたんだ…?死まで覚悟したというのに。こいつらは、薄暗いオフィスでニタニタしたインド人に小一時間待たされる恐怖をちっともわかっちゃいない。

紙幣を交換し握手を求められ応じた。これで終わりだ!帰り道は大丈夫か?と言われ、放心状態のまま、大丈夫だと答え建物を出た。

 

銃の男が、笑顔で見送ってくれた。

 

ただの被害妄想でしかなかったが、こんなに恐怖するならレートが悪い方がいいんじゃないかとすら思った。