26歳、高卒、職歴なし

口だけは達者な26歳の、前を向いて生きていく記録

コルカタ、最初の夜。 - インド放浪#4

随分と時間が流れた。

怠惰がなかったとは口が裂けても言えないが、ことの全てを書くには、ここは、あまりにも開けていて困ってしまう。

今更ながらこれは誰かの手記を読んでいる体裁を取らないものか、もしくは苦し紛れの夢オチで誤魔化しはきかないか…などと捻って唸ってはみたが。現実とは時に、物語よりも奇なるものでありましょう。

 

コルカタの初夜は落ち着く訳もなかった。

結局散々街を徘徊し、やれあっちは汚すぎる、やれ暗くて怖い、やれちょっと高そうだなあ…などと選り好みをしては言い訳を繰り返して、宿一つすら選べずに足はくたくたになっていた。

次見つけたマシそうなところに入ろうと意を決して、少し歩いた先の鉄格子越しに仲の談笑するインド人二人に声をかけた。

「宿を探してる。ここは今日は空きはあるか?」

彼らもかなり驚いていたが僕を招き入れた。

「空きはある、が少し高い部屋だけだ。2500ルピー、3000ルピー、5000ルピー。どの部屋も間違いなくホットシャワーがある。」

Wi-Fiはある?すごく困ってるんだ。」

「あるとも!安心してくれ」

こうしてその中でも一番安い2500ルピーの部屋に決めた。日本円にして7500円。安くは無い。

 

「どうぞ、ご主人」

そう言われ部屋に入ると天井のえらく高いダブルベッドのがらんとした部屋に通された。(のちにわかることだが、インドでこれほどの宿は見なかった。最も、その後の宿は予算が1/10だったりした。"sir"なんて言われたのもここくらいだった、格式高いところだったのかもしれない。)やっと一息、荷物を置いて、明日からのことを考えてワクワクした。友人にすこし電話をして、明日行くべきところを一つ一つネットで調べて行った。

この街は酒に興味がないようだった。夜8時頃のコルカタ、空港からのバスも通る大通りからすこし街の内部に入るとすぐにある市場。昼間は男たちが我先に品物を売ろうと叫んでいたが、夜はいくらか落ち着いていた。それでも四方から車のクラクションが鳴り、八方から人の声がした。パッと開けたと思えば屋台がいくつか並んでいて、焼きそばのような屋台に目を引かれ自然と引き寄せられた。綺麗なおそらくまだ十代の女の子2人が仲良く焼きそばを食べていて、僕と目が合った。そのまま2、3人の少ない列に並んで、彼女たちと同じのをくれ、と注文した。

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しばらくして料理が運ばれてきた。目の前の皿に釘付けになって、一口頬張って、おぉ、悪くないじゃん、といった顔をしていたのだろう、いつから見られていたのか先ほどの女の子2人がニヤつきながらも少し不安げにこっちを見ていた。

うまいよとグーサインをして笑いかけると向こうも嬉しそうだった。

そう、この街は酒に興味がないようだった。街にはあらゆる種類のゴミがその辺に落ちていたが、酒瓶や缶の類はまったくなかった。

僕はビールが飲みたかった。